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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)10193号 判決

原告

外八名

右九名訴訟代理人弁護士

保持清

三上宏明

鈴木淳二

大口昭彦

高橋美成

伊東良徳

阿部裕行

遠藤憲一

加城千波

被告

右代表者法務大臣

遠藤要

右訴訟代理人弁護士

中村勲

右指定代理人

星野雅紀

外二名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告ら各自に対し、各金一二万円及びこれに対する昭和六一年六月一六日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告ら

原告らは、いずれも、東京地方裁判所刑事第二部に係属する凶器準備集合等被告事件(同庁昭和六〇年(わ)第三〇四号等。以下「本件刑事事件」という。)の被告人であり、現在も東京拘置所に在監中である。

2  本件公判期日及び裁判長

昭和六一年六月一六日、午後一時四五分、原告らを被告人とする本件刑事事件の第一回公判期日(以下「本件公判期日」という。)の公判が、東京地方裁判所四二九号法廷で開廷された。右期日において訴訟を指揮していたのは東京地方裁判所刑事第二部所属の裁判官である中山善房裁判長(以下「中山裁判長」という。)である。

3  本件公判期日の経緯

本件公判期日の経緯は、概ね次のとおりである。

(一) 午後一時一五分、被告人ら(原告ら)が入廷し、原告らと弁護人の打ち合わせが三〇分間行われた後、午後一時四五分、開廷となつた。

(二) 冒頭、保持弁護人が「警備・戒護問題に対する申入れ」を一五分間行つた後、午後二時、被告人A(原告A)が戒護に関する発言を求めたが、中山裁判長は人定質問の手続を開始したため、弁護人がこれに抗議し、原告Aの発言の許可を求めたところ、中山裁判長は、人定質問後にこれを許可すると約束した。

(三) 引き続き、被告人ら全員の人定質問が約一〇分間にわたり行われたが、中山裁判長は、人定質問が終了するや直ちに検察官に対し起訴状の朗読を促した。そこで、原告Aが前記戒護に関する発言を求めたところ、中山裁判長が、起訴状の朗読後、意見陳述の際になすよう命じたので、三上弁護人は、前記の約束を反古にして起訴状朗読を強行しようとする中山裁判長の訴訟指揮に対して異議を述べたが、中山裁判長は、この異議を無視し、原告ら及び弁護人の抗議、異議並びに傍聴人の怒号の中を、約一五分間にわたり起訴状朗読を強行させた。起訴状朗読後、三上弁護人が右異議の無視及び手続の強行について異議を申し立てたが、棄却された。

(四) 午後二時四〇分頃、弁護人らから、起訴状に対する求釈明の申立て(求釈明書朗読)がなされ、ついで、再求釈明の申立てがなされた。さらに、再々求釈明の申立てがなされたが、中山裁判長は、右再々求釈明に応せず、これを打ち切つたので、阿部弁護人が右再々求釈明の打切りに対し異議を申し立てたが、棄却された。引き続き、保持弁護人が起訴状の余事記載削除の職権発動を求めたが、右職権は発動されなかつた。

(五) 午後三時三〇分から午後四時までの休廷の後、公判が再開され、大口弁護人は警備・戒護の是正を求める申立てをしたが、中山裁判長は、「このままの状態で進める。」旨を述べた。右に対し大口弁護人は異議を申し立てたが棄却された。続いて弁護人らは本件刑事事件等いわゆる浅草橋事件の被告人三八名の弁論併合の申立てをなし(約一〇分間)、被告人B(原告B)も弁論併合を要求する発言をした。

(六) 午後四時三〇分頃から被告人の意見陳述の手続が開始された。

まず、原告Aが意見陳述をしたが、中山裁判長が事前折衝での確認に反して三〇分にこれを制限したため紛糾した。原告Aの意見陳述開始後三〇分を経過した時点で中山裁判長が右意見陳述を打ち切つたので、同原告は抗議し、弁護人らも異議を述べたが、中山裁判長は右を無視して、原告Aに発言を禁止し、ついで、退廷を命じた。

中山裁判長は、弁護人の異議を無視して、引き続き、被告人C(原告C)、同D(原告D)及び同E(原告E)に対し、順次、意見陳述をするか否かを問い、「意見陳述の機会を与えました。」と述べて、同原告らが意見陳述の機会を放棄したものとみなし、その後前記異議を棄却した。

(七) 午後五時三〇分頃、被告人F(原告F)の意見陳述が二〇分間にわたり行われた。午後五時五〇分頃、弁護人が次回続行の申立てをしたが、中山裁判長は、本日中に被告人全員の意見陳述を終える旨を宣言し、被告人G(原告G)の意見陳述を二〇分間行つた。

(八) 午後六時一五分頃から一〇分間休廷の後、中山裁判長は、原告C、同D、同Eは、意見陳述の機会を放棄したものと認められるが、一〇分ずつに限り意見陳述を認めることとし、他の被告人は二〇分ずつ認める旨を告げ、被告人H(原告H)が二〇分間意見陳述を行つた。

(九) 午後六時五〇分、弁護人が次回続行の申立てをしたが、中山裁判長は、もちろんこのまま続ける旨述べた。

(一〇) ついで被告人I(原告I)の意見陳述が開始され、午後六時五七分、中山裁判長は、同原告の意見陳述がいまだ一七分しか経過していないのに右陳述を打ち切り、これに抗議する同原告の発言を禁止し、さらに弁護人が行つた異議申立てを無視して同原告に退廷を命じた。右退廷命令の後、弁護人の右異議申立ては棄却された。

(一一) 午後七時二〇分頃、原告Bの意見陳述が二〇分にわたり行われ、午後七時四〇分過ぎ、中山裁判長は、原告Cに対し、一〇分間で陳述するよう命じた。大口弁護人は、中山裁判長ら三裁判官の忌避を申し立てたが、簡易却下され、原告Cの意見陳述が一〇分間行われた。

(一二) 午後七時五九分頃、原告Dの意見陳述が開始されたが、中山裁判長は約八分間経過した時点でこれを打ち切り、同原告の発言を禁止し、弁護人の異議を無視して、同原告に退廷を命じた。引き続き、原告Eの意見陳述が一〇分間行われた。

(一三) 午後八時二五分、閉廷となつた。

4  本件訴訟指揮による夜間に及ぶ開廷(不法行為)

3記載のとおり、中山裁判長は、通常の閉廷時刻である午後四時三〇分を大幅に経過してからもなお手続を進行させようとし、これについて弁護人らが行つた次回続行の申立に対しても、「もちろん、続けます。今日は被告人全員の意見陳述を終えます。」と宣言して、引き続き訴訟を進行させ、結局、被告人全員(原告ら九名全員)の意見陳述が終了する午後八時三〇分頃まで、右手続を強行し、閉廷しなかつたものである(以下、中山裁判長が行つた右訴訟指揮を「本件訴訟指揮」という。)。

5  本件訴訟指揮の違法性及び被告の責任

(一) 被告の責任

被告は、公務員である中山裁判長が、裁判官としての職務を行うについて原告らに加えた後記の損害について、国家賠償法一条一項に基づき、賠償する責任がある。

(二) 本件訴訟指揮の違法性

(1) 中山裁判長は、通常の閉廷時刻である午後四時三〇分頃から被告人意見陳述の手続に入り、閉廷時刻が遅くなることを熟知のうえ、九名全員の陳述が終了するまで右手続を強行し、異常に遅い午後八時三〇分までこれを行つたものであつて、右訴訟指揮が裁判長の訴訟指揮権に基づく合理的裁量の範囲を著しく逸脱した違法なものであることは明らかである。

(2) すなわち、裁判を受ける権利は、通常の生活状態で審理を受けることを前提としている。精神的肉体的な意味で合理的にエネルギーを発揮できる状態が当然保障されなければならない。深夜に及ぶ取り調べが許されないということも、人間が合理的に活動できる時間に限定されなければならないからである。審理が夜間さらに長時間に及び、その結果、後々の生活に支障が生じるような訴訟運営は、基本的人権の観点から、当然許されないことといわなければならない。東京高等裁判所訴訟手続準則七条によれば、閉廷時刻は午後四時三〇分とされている。これは、基本的人権の保障という観点から定められている閉廷時刻のガイドラインとしてとらえられるべきものである。

当日、中山裁判長による前記のような夜間の公判強行を正当化し得る事情は何ら存しなかつた。すなわち、本件刑事事件において、第一回公判期日をもつて原告ら全員の意見陳述を終了しなければならない必然性、根拠は全くなかつた。

現に、いわゆる浅草橋事件が係属する東京地方裁判所刑事第一部、第三部及び第四部において、第一回公判期日に被告人全員の意見陳述が終了した事例はない。いずれの部においても、右期日における意見陳述は、二名ないし三名の被告人についてしか行われていない。ひとり、中山裁判長のみが、自己の設定した公判スケジュールに固執するあまり、時間的無理を承知のうえ、強引に夜八時三〇分頃まで公判を強行し、その結果、原告らに対し、前記のような肉体的精神的損害を加えたのである。

右は、憲法三一条、三四条及び三七条一項並びに刑事訴訟法一条に違背する違憲違法な訴訟指揮であり、不法行為に該当する。

6  損害

(一) 中山裁判長による本件訴訟指揮の結果、原告らが東京拘置所に帰監したのは、前同日午後九時三〇分頃であつた。

その結果、原告らは、

(1) 午後九時三〇分過ぎまで夕食をとることができなかつた。原告らが右同日裁判所仮監で昼食をとつたのは、午前一一時三〇分頃である。したがつて、原告らは、一〇時間余り食事を給されなかつたことになる。しかも、右夕食は、居房配食後、五時間余も不衛生な状態で放置されていたため、既に固渇し、およそ食事の名に値しないものであつた。

(2) 長時間の身体的拘束による肉体的精神的苦痛を強いられた。原告らは、同日の法廷において、いわゆるサンドイッチ式戒護という重戒護下にあり、拘置所職員により両側を圧着されたまま、午後一時一五分から七時間余にわたり、物理的精神的拘束状態を甘受しなければならなかつた。

(3) 睡眠を満足にとることができなかつた。原告らが東京拘置所に帰監した時点で、同拘置所の就寝時刻(午後九時)は、既に大幅に経過していた。したがつて、原告らは、平素保障されている同拘置所における就寝可能時間を一方的に奪われ、睡眠時間を削減された。又、前記のような強権的訴訟指揮と長時間の戒護による緊張と疲労のため、原告らの中には、帰房してから眠ることすらできない者もいた。

(二) 原告らの被つた具体的損害は以下のとおりである。

(1) 慰謝料

原告らは、中山裁判長による午後八時三〇分頃までにわたる強権的訴訟指揮により、前記のような精神的肉体的苦痛を被つた。また、原告らは、公平かつ適正な訴訟を当然予想していたものであり、右のような常軌を逸した訴訟指揮により受けた精神的衝撃ははかり知れない。これを金銭をもつて慰謝することは困難であるが、あえてそれを金銭的に評価するとすれば、原告らに対する慰謝料としては各金一〇万円を下らない。

(2) 弁護士費用

原告らは、原告ら訴訟代理人に本件訴訟の遂行を委任し、その報酬としてそれぞれ請求金額の二割即ち各二万円を支払う旨を約した。

7  結論

よつて、原告らは、各自、被告に対し、国家賠償法一条一項に基づき、各金一二万円及びこれに対する本件不法行為の日である昭和六一年六月一六日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3(一)の事実は認める。

同3(二)の事実中、冒頭、保持弁護人が「警備・戒護問題に対する申入れ」を一五分間行つたこと、午後二時頃、原告Aが戒護に関する発言を求めたが、中山裁判長はこれを許さず人定質問の手続を開始したことは認め、その余は否認する。

同3(三)の事実中、被告人ら全員の人定質問が約一〇分間にわたり行われたこと、午後二時一〇分頃から検察官の起訴状朗読が行われ、それが午後二時三〇分前には終了したこと、起訴状朗読後三上弁護人から異議の申立てがあり、それが棄却されたことは認め(なお、引き続いて鈴木弁護人、大口弁護人からも各異議が申し立てられ、いずれも棄却されている。)、その余は否認する。

同3(四)の事実は認める。

同3(五)の事実は認める。ただし、戒護に関する申立てをしたのは、正確には三上弁護人である。

同3(六)の事実中、午後四時三〇分頃被告人の意見陳述が開始され、まず、原告Aが意見陳述を行つたこと、同原告が裁判長の訴訟指揮に従わず意見陳述をして発言禁止を命ぜられ、さらに退廷を命ぜられたこと、これに対して弁護人から異議申立てがあり、それが棄却されたこと、中山裁判長が原告C、同D、同Eに対し意見陳述の機会を与え、その後同原告らが同機会を放棄したものと判断されたことは認め、その余は否認する。

同3(七)の事実中、午後五時三〇分頃原告Fが意見陳述をしていたこと、同原告の意見陳述が約二〇分であつたこと、その後原告Gが約二〇分間意見陳述をしたことは認め、その余は否認する。

同3(八)の事実中、午後六時一五分頃から一〇分間の休廷があつたこと(なお、原告Gの意見陳述は、休廷及び公判再開後に行われたものである。)、公判が再開された後、中山裁判長が、原告C、同D及び同Eに対して各一〇分間の意見陳述を認める旨を述べたこと、原告Hが約二〇分間意見陳述をしたことは認め、その余は否認する。

同3(九)の事実中、午後六時五〇分頃弁護人が次回続行を要望し、審理続行に対して異議を申し立て、それが棄却されたことは認め、その余は否認する。

同3(一〇)の事実中、原告Iの意見陳述が約二〇分であつたこと、同原告が裁判長の訴訟指揮に従わず意見陳述を継続して発言禁止を命ぜられ、さらに退廷を命ぜられたこと、これに対して弁護人から異議申立てがあり、それが棄却されたことは認めるが、その余は否認する。

同3(一一)の事実中、午後七時二〇分頃、原告Bが約二〇分間意見陳述を行つたこと、午後七時四〇分頃中山裁判長が原告Cに意見陳述の機会を与えたこと、大口弁護人が裁判官の忌避を申し立て、それが簡易却下されたこと、原告Cが約一〇分間意見陳述を行つたことは認め、その余は否認する。

同3(一二)の事実中、原告Dが約一〇分間意見陳述を行つたこと、同原告が裁判長の訴訟指揮に従わず意見陳述を継続して退廷を命ぜられたこと、これに対して弁護人から異議申立てがあり、これが棄却され、その後原告Eが意見陳述を行つたことはいずれも認め、その余は否認する。

同3(一三)の事実は認める。

4  同4の事実中、被告人の意見陳述手続が行われていた午後六時五〇分頃、弁護人らから次回続行の要望がなされたこと、これに対し、中山裁判長が今回の期日で被告人の意見陳述を終わらせたい旨述べたこと、被告人全員の意見陳述が終了し、閉廷したのが午後八時三〇分頃であつたことはいずれも認めるが、その余は否認する。

5  同5(一)は争う。

同5(二)(1)は争う。同(2)のうち、東京高等裁判所訴訟手続準則七条によれば閉廷時刻は原則として午後四時三〇分とする旨の定めがあること、いわゆる浅草橋事件が係属する東京地方裁判所刑事第一部、第三部及び第四部において第一回公判期日における被告人の意見陳述が二名ないし三名にとどまつたことは認めるが、その余は争う。

6  同6(一)の事実中、原告らが東京拘置所に帰監し、同拘置所で夕食をとつたのが午後九時三〇分過ぎ頃であつたこと、原告らが同日裁判所仮監で昼食をとつたのが午前一一時三〇分頃であつたこと、昼食と夕食との間が一〇時間余となること、同日の法廷内の戒護にあたり、いわゆるサンドイッチ式戒護の方法がとられていたこと、同拘置所の就寝時刻が午後九時とされていることは、いずれも認めるが、その余は争う。

同6(二)(1)は争う。同(2)の事実は知らない。

三  被告の主張

1  一般に、裁判官の職務行為の損害賠償責任については、当該裁判官が違法又は不当な目的をもつて裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを必要とするものと解するのが確立した判例法理である。

したがつて、本件の要点は、午後八時三〇分頃まで開廷し続けた中山裁判長の訴訟指揮が、違法又は不当な目的をもつてなした等裁判長として付与された権限の趣旨に明らかに背いた場合に該当するか否かにある。

2  ところで、東京高等裁判所訴訟手続準則(以下「準則」ともいう。)七条は、閉廷時刻についての一応の目安を定めたものにすぎず、具体的にいつ閉廷するかは、裁判長が事案の性質、内容、訴訟当事者の数、当該期日の内容、経過等諸般の事情を総合的に考慮した合理的裁量により決定すべきものであり、その訴訟指揮権に基づく専権事項にほかならない。右準則の規定の趣旨は、一応の閉廷時刻を定め、訴訟関係人の緩慢ないし無意味な訴訟活動を排し、無駄のない充実した審理を実現しようとするところにあるものであるところ(準則一条)、事案の性質、内容及び期日の性質、内容等によつては、かえつて午後四時三〇分を超過して審理を継続した方が充実した審理の実現につながることがあるのであるから、「通常の閉廷時刻」がいかなる時刻かは、事案や期日により異なる事柄である。

3  刑事訴訟規則においては、訴訟関係人は、第一回公判期日前に、できる限り証拠の収集及び整理をし(刑事訴訟規則一七八条の二)、取調べを請求する証拠書類又は証拠物があるときはすみやかに相手方に閲覧の機会を与え(同条の六)、証人等の氏名・住居を知る機会を与えるべきものとされている(同条の七)ほか、裁判所としても、第一回公判期日の指定は訴訟関係人がなすべき訴訟の準備に要する期間を考慮し(同条の四)、訴訟関係人にその期日の審理にあてることができる見込み時間を知らせなければならないものとされ(同条の五)、かつ、検察官及び弁護人を出頭させた上、訴訟の進行に必要な打ち合わせを行うことができるものとされており(同条の一〇)、さらに、検察官及び弁護人は第一回公判期日において取り調べられる見込みのある証人は在廷させるように努めなければならないものとされている(同条の八)。また、東京高等裁判所訴訟手続準則においては、検察官及び弁護人は、第一回公判期日において事件の審判に必要と認められるすべての証拠の取調べを請求することが望ましいものとされている(準則一一三条一項)。これらは、刑事訴訟法及び同規則の理念である適正かつ迅速な裁判(同法一条、同規則一条)の実現のため、第一回公判期日から直ちに充実した実質的審理をなすべきことが法的に要請されていることの現れである。

4(一)  本件においても、裁判所は、刑事訴訟法及び同規則のかかる趣旨にのつとり、第一回公判期日において、少なくとも被告人全員の意見陳述までは終了させるという方針で、同期日にのぞんだものである。公判が通常の経過で進んだとすれば、通常の閉廷時刻までには右の予定どおり被告人の意見陳述までの手続が終了する見送みも十分あつたものと解される。

(二)  ところが、本件公判期日においては、弁護人側から極めて頻繁に多数の異議申立てがなされたばかりでなく、度重なる起訴状への求釈明申立て、弁論併合申立て、忌避申立て等があり、さらに被告人九名全員が約一〇ないし三〇分に及ぶ国鉄分割・民営化問題をめぐる情勢と経過、反対運動の実情等の政治的意見を主とする意見陳述をなし、しかもそのうち三名は発言禁止命令後も発言し続けたため退廷を命じられ、また、傍聴人からも六度にわたる不規則発言による訴訟進行の妨害がなされたりしたために、午後八時三〇分頃、ようやく被告人全員の意見陳述を終了し得たものであつて、本件公判期日の開廷時間の長期化の原因は主として被告人である原告ら及びその弁護人が右のような言動をなしたことにある。

そして、弁護人らが審理の継続に異議を述べたのは審理が午後七時頃に及んだ時のことであり、それ以前においては、原告ら及び弁護人らは、意見陳述を制限する訴訟指揮に異議を唱えるなどの訴訟活動を行つていたこと、右審理の継続に関する異議の後においては、原告ら及び弁護人らはこれに関する異議の申立てをすることなく、被告人の意見陳述や異議申立て等を繰り返すなどの訴訟活動を行つていたことなどの事情からすれば、中山裁判長が午後四時三〇分を超えて審理を継続した当初はもとより、審理の継続に関する異議が棄却された後においても、原告ら及び弁護人らは、より一層長時間の意見陳述を求め訴訟活動をしていたものであり、むしろ審理を継続することについて了承しないし格別争わなかつたものと解される。

しかも、原告ら及び弁護人らが審理の継続に異議を述べた午後七時頃においては、余すところ五名の被告人の意見陳述のみであり(そのうち三名の陳述時間は各一〇分ずつに制限されていた。)、かつ、それまでの被告人の意見陳述の内容はいずれも罪体との関連が薄いと目される政治的意見を主としている上、内容的にも基本的に同一であるなどの状況にあつたのである。

5  中山裁判長は、右4のような事情のもとで、刑事訴訟法及び同規則の理念である適正かつ迅速な裁判(同法一条、同規則一条)の実現のため、通常であれば証拠調べ手続まで入ることが要請されている第一回公判手続において、右手続の前段階である被告人の意見陳述まで終了させ、同期日の審理の充実を図ることを目的として午後八時三〇分まで開廷したものであり、右はまことにやむを得ないものであつて、裁判長の訴訟指揮権の行使として合理的裁量の範囲内のものであることは明らかである。

6  原告らは、本件訴訟指揮により、夜間、長時間法廷に拘束されるという肉体的精神的損害を受けた等と主張するが、前記5の事情のもとでは、右は訴訟当事者として当然受忍すべき範囲内のものであり、賠償すべき損害として法的保護に値するものではない。

7  かように、中山裁判長の訴訟指揮は、合理的裁量の範囲内にあるものであつて、違法又は不当な目的をもつてこれをしたなど、その付与された権限の趣旨に明らかに背いて訴訟指揮権を行使したと認められるような特段の事情があるものとは到底いうことができないから、原告らの主張は失当である。

四  被告の主張に対する原告らの反論

1  被告の主張1について

(一) 裁判官の職務行為についてのみ一般の不法行為の成立要件に加えて被告主張のような要件を付加することは不当である。

(二) のみならず、被告の主張する「当該裁判官が違法又は不当な目的をもつて裁判をした」との要件についてみても、中山裁判長は、その刑事被告人に対する加虐的性向の充足と戦後日本の刑事司法制度破壊の目的を有していたことは明らかである。右は本件刑事事件における本件公判期日後の期日における同裁判長の訴訟指揮からみれば明白である。すなわち、中山裁判長は、本件公判期日後の期日においても、左記のとおり夜間審理を反復して強行している上、証人の証言拒否に加担したり、弁護人なしで公判を開廷しあるいは開廷しようとしたりして違法行為を反復し、さらに、被告人らに一切発言の機会を与えず、「異議」、「忌避」等口を開いただけで退廷を命じ、拘置所職員をして暴力的に退廷の執行をさせるなど、目的のためには手段を選ばない加虐的暴力的な訴訟指揮をしているのである。

第三回公判期日(昭和六一年八月一二日)午後七時過ぎ閉廷

第五回公判期日(同年九月八日)午後五時二〇分閉廷

第六回公判期日(同年一〇月一三日)午後五時四五分閉廷

第七回公判期日(同年一〇月三一日)午後五時二〇分閉廷

第一一回公判期日(昭和六二年五月一一日)午後五時五〇分閉廷

2  被告の主張2について

東京高等裁判所訴訟手続準則七条に掲記の午後四時三〇分が閉廷時刻のガイドラインというべきものであること、実務上午後四時三〇分を多少超過して審理が行われることも少なくないこと、また、具体的にいつ閉廷するかは裁判長が諸般の事情を総合的に考慮し合理的裁量により決定すべきものであり、裁判長の訴訟指揮権に基づく専権事項であることは争わない。

しかし、そうであるからといつて、みだりに大幅に右準則で定められている午後四時三〇分というガイドラインを超過してよいということにはならない。訴訟当事者、関係人らや裁判官が訴訟活動、審理活動に合理的エネルギーを発揮し得る状態を保ち得ないような長時間にわたる審理は適正適切な審理とはいい難い。会社や工場等で通常の勤務時間について午後五時退社とか午後四時三〇分作業終了などと定められているように、午後四時三〇分というのは人間が判断活動に合理的にエネルギーを発揮できる時間の常識的な目安なのである。ましてや、本件において原告らは、拘置所に勾留中の被告人であり、しかも接見禁止を強いられ、法廷では拘置所職員により両側から圧着された重戒護の状態のもとで出廷していたのである。通常閉廷時刻を優に四時間も超過した夜間法廷が裁判長の訴訟指揮の行使として合理的裁量の範囲を著しく逸脱するものであることは明らかである。

3  被告の主張3について

いわゆる浅草橋事件は集団公安事件としてごく一般的な事件であり、本件公判期日の進め方、冒頭手続の進め方については、集団公安事件におけるごとく普通のあり方として、裁判所と弁護人との事前の折衝で確認ずみであつた。右具体的事情を無視して、刑事訴訟法規や東京高等裁判所訴訟手続準則の訓示的規定を一般的抽象的に掲げ、第一回公判期日内に被告人の意見陳述を了えることが当然であるかのように言つてみても何ら意味はない。問題は、ごく普通の集団公安事件でみられる第一回公判期日、冒頭手続の進め方からみて、果たして本件刑事事件の被告人全員の意見陳述が時間的に期日内におさまり得るのか否か、これがおさまらないことがあらかじめ明確である以上、閉廷時刻を本件のように四時間も超えてまでして被告人全員の意見陳述を終了させるべきか否かにあるのである。

4  被告の主張4について

(一) 被告の主張4(一)の主張のうち、中山裁判長が、第一回公判期日において少なくとも被告人全員の意見陳述までは終了させるという方針で、同期日にのぞんだことは認める。問題はその方針及びその実行である。

被告は、公判が通常の経過で進んだとすれば、通常の閉廷時刻までには右の予定通り被告人の意見陳述までの手続が終了する見込みも十分あつたものと解される旨主張するが、裁判所と弁護人の事前折衝における具体的確認事項を検討すれば、右見込みは全く存しなかつたことが明らかである。すなわち、右事前折衝においては、被告人意見陳述につき、原告Aを除く原告ら八名については各二〇分、原告Aについては、全学連委員長であることからも相応の時間を与えることが確認され、直前の折衝において弁護人が原告Aの意見陳述について五〇分を要求したときも、中山裁判長は何も特別のことは言わず了解したかのような態度であつた。また、開廷前の原告らと被告人の打ち合わせ三〇分(午後一時一五分から同四五分)、いわゆるサンドイッチ式重戒護の是正を求める発言、求釈明・再求釈明、弁論併合申立て及び休廷時間三〇分は、事前折衝で裁判所も認めていた事項である。このように事前折衝で合意された事項を勘案すれば、第一回期日の通常閉廷時刻を超過する時間的経過をたどることは確実であつたのであり(事前折衝で確認された手順及び時間で進行したとしても、午後七時近くまでかかる計算となる。)、被告人全員の意見陳述を第一回公判期日で終了することには、あらかじめ時間的無理があつたのである。

(二) 被告の主張4(二)の主張のうち、弁護人らの異議申立て、求釈明申立て、弁論併合申立て、忌避申立て等は弁護人らの正当な権利の行使であることは請求原因2の経緯からすれば明らかである。また、原告らの意見陳述の時間については、前記(一)の事前折衝における確認に鑑み、これが長すぎて公判時間に予定外の遷延をもたらしたという主張は失当である。次に、原告らの意見陳述の内容が、国鉄分割民営化をめぐる情勢と経過、反対運動の実情等の政治的意見を主とするものであつたことは認めるが、いわゆる浅草橋事件は、国鉄分割・民営化問題をめぐる中曽根政権・国鉄当局と国鉄労働者をはじめとする国民の深刻な政治的社会的対立を背景として発生した事件であるから、被告人の意見陳述も右のような点に触れざるを得ないのであり、弁護人は、事前折衝でもこれを明らかにして相応の陳述時間を要求したのである。また、次回続行の申立てについても、三上弁護人は、午後五時五〇分頃に、最初の次回続行の申立てをしていたものである。

5  以上、中山裁判長は、違法又は不当な目的をもつて、裁判長に付与された権限の趣旨に明らかに背いて裁判長としての専権を行使し、裁判長の合理的裁量の範囲を著しく逸脱して訴訟指揮をしたものであり、原告らの受けた肉体的精神的損害は、訴訟当事者として当然受忍すべき範囲外のものであつて、被告にはこれを賠償すべき責任があることは明らかである。

(右原告らの反論に対する被告の認否)

1  被告の主張に対する原告らの反論1ないし3は争う。

2  同4の主張中、第一回公判期日前の裁判所と弁護人との打合わせにおいて、被告人の意見陳述時間として、一人二〇分を基本とする旨予定されていたことは認め、その余は争う。

3  同5の主張は争う。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1(原告ら)の事実及び同2(本件公判期日及び裁判長)の事実は当事者間に争いがない。

二請求原因3(本件公判期日の経緯)の事実のうち、次の各事実も当事者間に争いがない。

本件公判期日においては、午後一時一五分、原告らが入廷し、原告らと弁護人の打ち合わせが三〇分間行われた後、午後一時四五分、本件刑事事件につき、第一回公判が開廷された。冒頭、弁護人が「警備・戒護問題に対する申入れ」を約一五分間行つた後、原告Aが戒護に関する発言を求めたが、その後人定質問の手続が開始され、引き続き午後二時一〇分頃から二時三〇分頃まで検察官の起訴状朗読が行われた。午後二時四〇分頃、弁護人らから、起訴状に対する求釈明、再求釈明、再々求釈明、起訴状余事記載削除の申立てがなされた。午後三時三〇分から午後四時までの休廷の後、戒護に関する申立てがなされ、次いでいわゆる浅草橋事件の被告人三八名の弁論併合の申立てがなされた。これらが終了して、午後四時三〇分頃から被告人意見陳述の手続が開始され、まず、原告Aが意見陳述を行い(国鉄分割・民営化問題をめぐる情勢と経過、反対運動の実情等の政治的意見を主とする内容のものであつた。以下の原告らの意見陳述もこの点は同様であつた。)、約三〇分経過後に同原告は発言禁止を命ぜられ、さらに退廷を命ぜられた。中山裁判長は、続いて原告C、同D、同Eに対し意見陳述の機会を与えた上、同原告らにおいてこれを放棄したものと判断した。その後原告F、同G、同Hがそれぞれ約二〇分間意見陳述をした。この間に、午後六時一五分頃から一〇分間の休廷があつた。午後六時五〇分ないし午後七時頃、弁護人が次回続行の申立てをしたが、中山裁判長は、本件公判期日において被告人全員の意見陳述を終える旨告げた。次いで原告Iが意見陳述を行い、約二〇分経過後、発言禁止を命ぜられ、さらに退廷を命ぜられた。午後七時二〇分頃、原告Bが約二〇分間意見陳述を行い、午後七時四〇分頃、弁護人が裁判官の忌避を申し立てたが、簡易却下された。そして、中山裁判長は、先に意見陳述の機会を放棄したものと判断された原告C、同D及び同Eについて、一〇分間に限り意見陳述を認めることとし、まず、原告Cが約一〇分間意見陳述を行い、次に原告Dが意見陳述を行つたが、約一〇分経過後、退廷を命ぜられ、原告Eが約一〇分間意見陳述を行つた。右原告Eの意見陳述をもつて被告人全員の意見陳述が終了し、午後八時三〇分頃、閉廷となつた。

三また、本件刑事事件が、いわゆる集団公安事件であり、その審理に比較的長時間を要することが見込まれるものであつたことは、原告らにおいて自認するところであり、被告もこれを明らかに争わないと認められるところ、中山裁判長が、本件公判期日において被告人全員の意見陳述を終了させる方針で本件刑事事件の公判に臨んでいたことも当事者間に争いがない。

四上記争いのない各事実により認められる本件公判期日における手続の推移を通観すれば、本件公判期日において中山裁判長が行つた訴訟指揮は、本件刑事事件につき予想される訴訟の長期化をできるだけ避け、第一回の公判期日において冒頭手続を了えた上、第二回公判期日以降すみやかに実質的審理に入り得るようにすることを考慮して行われているものであることが明らかであつて、その訴訟指揮に不法な目的があつたものとは認められない。

また、本件公判期日における手続経過に鑑みても、本件公判期日については、裁判所と弁護人との事前の折衝を通して、人定質問及び起訴状の朗読後、被告人の意見陳述の手続まで行われることが、予定されていたものであるというべきところ、その手続の冒頭から被告人及び弁護人による戒護に関する申し入れや、起訴状に対する求釈明の反復、起訴状の余事記載削除の申し入れなどが相次ぎ、起訴状の朗読自体は二〇分程で済んだものの、被告人の意見陳述に入つたのは午後四時三〇分頃となつたものであり、また、被告人の意見陳述は、原告Aから始められ、同原告において約三〇分間、原告F、同G、同H、同I、同Bにおいてそれぞれ約二〇分間、原告C、同D、同Eにおいてそれぞれ約一〇分間行われたが、この間、予定時間の超過による発言禁止や被告人の退廷命令、弁護人による裁判官の忌避申立て等があり、かかる経過を辿つたために被告人の意見陳述の終了は午後八時三〇分近くにまで及び、同時刻頃ようやく閉廷となつたものであることが認められる。したがつて、午後一時四五分の開廷から午後八時三〇分頃の閉廷までの間、漫然と訴訟手続が進められていたものでないことはいうまでもなく、中山裁判長としては、予定どおり手続を進行してすみやかに本件公判期日を閉廷するために鋭意訴訟指揮を行つていたものであることが明らかであるから、その訴訟指揮が不法ないし不適切に行使されたものであるとは到底認められないし、まして右訴訟指揮権の行使が違憲であることを疑わせる事情は認められない。

原告らは、東京高等裁判所訴訟手続準則七条では閉廷時刻が原則として午後四時三〇分と定められていることを挙げ(この定めがあることは当事者間に争いがない。)、また、午後八時三〇分までに至る公判の開廷は、精神的、肉体的にみて合理的に人間のエネルギーを発揮できる生活状態ではないとも主張するが、右手続準則の定めは、訴訟手続の進行上特段の事情がない限り、職員の勤務時間や、訴訟関係者の通常の生活条件等をも考慮してなるべく同時刻を目途に閉廷するのが相当であるとする趣旨において定められている訓示的な意味をもつものであると解されたところ、本件公判期日における手続の進行経過に照らせば、右準則の定めにかかわらず、本件刑事事件の公判が午後八時三〇分頃まで閉廷されなかつたとしてもなんら違法とすべき理由はないというべきである。そして、右公判は、午後一時四五分に開廷され、午後八時三〇分頃に閉廷されているもので、その公判の開廷から閉廷に至る時間は七時間弱であるところ、この間には、午後三時三〇分から午後四時までと、午後六時一五分頃から午後六時二五分頃まで二回の休廷時間もあつたのであるから、公判時間自体が長時間に及び過ぎて当事者の訴訟活動が阻害されるまでに至つていたものとは認められず、公判が午後八時三〇分頃まで行われたこと自体をとつてみても、訴訟当事者が翌日の生活に支障を来たす程に深夜に及ぶ公判であつたものとも認められない。

原告らは、閉廷時刻が午後八時三〇分頃となつたため、その後における夕食の摂取時刻や就寝時刻などが平日のそれより遅くなつたこと等をも主張するが、仮にそのような事実があり、その結果平日とは多少異なる生活を余儀なくされたとしても、右閉廷時刻等に鑑みれば、その影響が原告らの人権侵害にわたる程に多大なものであつたとは認め難く、原告らの受忍限度内のものであつたといわなければならない。

五要するに、本件公判期日における中山裁判長の訴訟指揮には、その事実経過に鑑み、裁判長に許容された合理的裁量の範囲を逸脱した違法があるとは認められず、もとより原告らが主張するような違憲のかども認められず、右訴訟指揮により公判の閉廷時刻が午後八時三〇分頃となつたことにより原告らになんらかの生活上の影響があつたとしても、右は受忍限度内にとどまるものであつて、人権侵害にわたる甚大な影響が及んでいるものとは到底認められない。

したがつて、右訴訟指揮が違憲、違法であるとする原告らの主張は、主張自体として採用することができないから、これを前提とする原告らの本訴請求は、その余について判断するまでもなく失当というべきである。

六よつて、原告らの各請求をいずれも理由なしとして棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

七なお、原告らは、本訴請求に関し、本件公判期日の全経過を録音した裁判所の録音テープについて証拠保全の申立てをしているものであるが、本訴において右録音テープを証拠として採用する必要性のないことは既に判断したところから明らかである。したがつて、本件証拠保全の申立ては保全の事由を欠くものであるから、これを却下することとする。

(裁判長裁判官山田 博 裁判官大弘 裁判官杉原 麗)

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